【Part 1】罠①:条件だけの採用〜「給与を上げれば人が定着する」という幻想〜
【Part 1】罠①:条件だけの採用〜「給与を上げれば人が定着する」という幻想〜
経営者の皆様、お疲れ様です。株式会社オウエンタイの川内リョウです。
現代の日本企業において、慢性的な人手不足は最も深刻な経営課題の一つと言えるでしょう。特に中小企業においては、欠員が出ると現場が回らなくなるという危機感から、「とにかく早く人を入れなければ」と採用活動を急務として進めるケースが多々見受けられます。
しかし、その焦りから生じる行動が、かえって「人がすぐに辞める組織」を作ってしまっているとしたらどうでしょうか。本日から3回にわたり、人がすぐに辞めてしまう中小企業が陥りがちな「3つの罠」について解説していきます。今回はその1つ目、「条件だけの採用」という罠についてお話しします。
求人募集を出す際、他社に負けまいと、給与、休日日数、福利厚生といった「条件面」ばかりを過剰にアピールしていませんか?「月給を他社より3万円高く設定すれば応募が来るだろう」「年間休日を増やせば人が集まるはずだ」と考える経営者は少なくありません。
確かに、求職者にとって労働条件は非常に重要な要素です。生活がかかっている以上、より良い条件を求めるのは当然のことです。しかし、問題は「条件だけ」を前面に押し出して採用を成功させた後に起こります。
条件面だけに惹かれて入社した人材は、会社に対する「帰属意識」や「仕事への共感」が希薄な傾向があります。彼らの働くモチベーションの源泉は「高い給与」や「休日の多さ」にあるため、もし他社があなたの会社よりもさらに良い条件を提示してきたら、ためらうことなくそちらへ移ってしまいます。これでは、どんなに採用にお金をかけても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので、採用と退職のいたちごっこから抜け出すことはできません。さらに、中小企業が資本力で勝る大企業と「条件面」だけで勝負を挑むのは、非常に分が悪い戦いと言わざるを得ません。
では、本当に定着する人材を採用し、長く活躍してもらうためには何が必要なのでしょうか。
それは、条件面に加えて、自社ならではの「定性的な魅力」を言語化し、力強く発信することです。例えば、「私たちの事業は、地域社会のどのような課題を解決しているのか」「どんな価値観を持った仲間が、どのような雰囲気で働いているのか」「入社後、どのようなスキルが身につき、どう成長できるのか」といった、お金には換算できない「独自の価値(やりがい)」です。
「うちは普通の町工場だから、そんな魅力はないよ」と謙遜される経営者の方もいらっしゃいますが、決してそんなことはありません。長年事業を継続できているということは、必ずお客様から選ばれる理由があり、そこで働く社員が誇りに思える要素が隠れているはずです。
採用活動は、単なる欠員補充ではありません。自社の魅力を見つめ直し、それに共感してくれる「仲間」を探すプロセスです。自社の本当の魅力、求職者の心に響く言葉で伝えきれていますか?
次回は、苦労して採用した人材が、入社直後に待ち受ける「罠②:現場への丸投げ」についてお伝えします。

